宝石鑑別やダイアモンドグレーディングの際に、なくてはならない器具が宝石学用の双眼顕微鏡ではなかと思います。
かつてはGIA GEM Instrumentsという部門で、GIA製の宝石機材を製造販売していました。
私が学んでいた当時のホームスタディクラスでは、ヘッド部分がアメリカンオプティカル製の顕微鏡マークⅦジェモライトが多く利用され、45倍~60倍率のものが混在していました。中には一世代前のマークⅥなどもあり、光源がハロゲンランプではなく電球であったため、長時間使用すると熱くて耐えられないものもありました。そのため、良い顕微鏡が置いてある場所を確保するため朝一で教室に来るのも、ホームスタディクラスでよく見られる光景でした。
GIAのレジデンスクラスでは、ヘッド部がライカ製60倍のものが主流でした。こちらのレンズはとても明るくて観察しやすいものでしたが、個人的な主観として、ヘッド部を軽くしてプラスティック素材を多用した構造上の問題なのか、アメリカンオプティカル製と比べるとレンズが少しカビやすい傾向にあるような気がしました。もちろん保管状態や使用環境などによってもかなり違ってくるので、判断は難しいのですけれども。
アメリカGIA本校は、カールスバッドという場所にあるのですが、このあたりは乾燥していることもあり、湿度が高くカビが発生しやすい日本ほど、その差は感じにくいのかも知れませんね。
小六堂で使用している顕微鏡は、デラックスAマークⅦになります。
主な特徴は以下の通りです。
・対物レンズ 0.7~3倍
・接眼レンズ 15倍
・10.5~45倍まで拡大可能(対物レンズと接眼レンズの倍率を掛け合わせます)
・アイリス絞り付き。蛇腹状のアイリスを調整して光量を変化させられます。店主はこの蛇腹が外れるとよく修理していました。これが結構面倒くさいんです。
・明視野照明(上 or 左)、暗視野照明(下 or 右)の切り替えが可能です。光源はハロゲンランプです。このランプも特殊な形状なので専用ランプを使用する必要があります。おそらく現状の顕微鏡とほぼ変わらない形状と思われるので、そのまま使用できるのではないかと思います。
・オーバーヘッドライト(昼色光)付き。赤いボタンを押すとONで黒いボタンがOFFになります。このボタンは壊れやすいので、優しく扱うことをおすすめします。
・ストーンホルダーの設置が可能。左右どちらでも付けられます。ストーンホルダーにアタッチメントをつけると、高さや角度が変えられる器具なんていうのもありました。
・ターンテーブル(回転台)がついているので、簡単に360°回転できます
・傾斜機構あり(角度調整ができます)
右側のスイッチをまわして電源のON/OFFをおこないます。このスイッチは特に壊れやすい箇所なので、優しく取り扱ってくださいね。真ん中はパイロットランプで、電源が入ると点灯します。左側の黒い箇所にはヒューズが入っています。
その他にもオプションを付ければ、偏光フィルターや浸漬皿を設置することも可能です。また接眼レンズ部に、アタッチメントをつけると、カメラで写真を撮ることもできます。ただ古いものだとアタッチメント自体を見つけることが困難なので、自力で探さないといけないのが面倒です。
上述したような宝石学用顕微鏡の装備は、今では当たり前の機能になっていますが、後発のものは、GIA製のものをよくよく調べ(真似?)て取り入れています。値段の高さや故障などのリスクはもちろんありますが、実際に使ってみると、やはりGIAが長い年月をかけて宝石学専用に開発してきた顕微鏡だけのことはあるなあと、その良さが再発見されます。
顕微鏡のセッティング(焦点あわせ)の仕方については、別の機会にお話ししようと思います。